プレゼン最前線2021年1月15日号
リモート時代のチーム
高野文夫 NPO日本プレゼンテーション協会理事長

リモートワークが難しい理由として、顔を合わせることの重要性から始ま り、情報漏洩のリスク、あるいは、労務管理の難しさなどが挙げられてきま した。

しかし、今回のCOVID-19感染拡大の問題で、多くの企業が準備不足の状 態でもリモートワークに踏み切らざるを得なくなったのです。

また、感染症の問題が一旦解決したとしても、この感染症は長引くであろ う。

また、コロナではない、別の感染症の襲来の可能性だって大いにあるので す。だからこの機会に、リモートワークの導入が難しいとしていた理由が本当 にリモートだからなのかを、自問自答しておくことが大切なのです。

リモートが理由ではなく、チームワーク等が理由ならば、まずはチームワ ークに焦点を当てて、チームワークを向上させる術に注力しなければいけな いのです。

極論すれば、今までチームワークに問題のあった組織は、今後のウイズ・ コロナ「withコロナ」または、アフター「afterコロナ」時代には、チーム はバラバラになってしまうでしょう。

withコロナ、afterコロナという言葉につて

治療薬やワクチンが量産前では、新しい生活様式を変えて新型コロナウイル スと共存(withコロナ)していかなくてはなりません。一方、治療薬やワクチ ンが量産された後を(afterコロナ)時代と言います

ところで、この未曽有の経験を経て、特定の意識・価値観や行動様式の変化
はそのままで、もとには戻らないだろうと言われています。

今の時点で、このコロナ問題を好機ととらえて、一気にチームワークアッ プのための施策を打つべきです。

メンバーが一堂に会して作業するチームを「リアル・チーム」と呼び、 「バーチャル・チーム」は、メンバーが離れた場所にいながらにして、ひとつ のチームとして機能している集団のことを指します。

バーチャル・チームは、リアル・チームと本質的に大きな違いがあるわ けではないのです。

人の集合体を、単なる足し算のグループではなく、相乗効果が生まれる掛 け算となる「チーム」として機能させれば良いだけの事なのです。

正に私が説き続けていた「ファシリテーションスタイルのチーム運営」の徹 底化がなされれば良いのです。

チームに属する各人が共通の目持ち、相互に協調しながらチームの成果を 目指すのであれば、各人の成長と共にチームも発展するといった点では何ら 変わりないのです。

ただ、チームのメンバーが、集まって互いの顔を合わせて対面でコミュニ ケーションを図る代わりに、離れた場でパソコンや i-Padやスマートフォン などの IT ツールを用いて、ZOOM等でコミュニケーションを図るという点 が違うだけなのです。

 リモートワーク時代には、バーチャル・チームの運営スキル、すなわ
ち、バーチャル・チームワーク・スキルを磨くことが肝になるでしょう。

最後に、バーチャル・チーム成功の秘訣をまとめます。

その1 はなから皆がローコンテクストだと思う事

業務におけるチームワークの発揮は、日本企業の得意とするところなので す。しかし、日本企業が得意とするのは、あくまで均質性の高いチームでの チームワークであり、ハイコンテクスト下でのチームワークです。

ハイコンテクストというのは、いわば、「あうんの呼吸」が通じる関係と いうことです。しかし、バーチャル・チームにおいては、「あうんの呼吸」 が通じないのです。ローコンテクストを前提にしたチームワークが求められるのです。

そしてこれからは、特に日本では外国人を労働者として雇い入れなければ 労務的に立ち行かなくなっています。東南アジアの人達に阿吽の呼吸を理解 せよと言っても無理なのです。

チーム作りの基本は、「ベクトル」「プロセス」「ヒューマン」の 3要 素を意識することですが、ローコンテクトを前提として、「言葉にする」 「整える」「見える化する」といったことにも注力することが最重要なの です。

その2 頻繁に「ベクトル」を合わせる

チームとして何を目指すのか(目標)、何に重きを置くのか(方針)を明 らかにし、そして目標や方針の意義を十分に皆が理解しなければなりません。

さらに、ビジョン(将来像)や、バリュー(価値)も明確に言葉にして 共有することで、チームに一体感をもたらすことが、バーチャル・チーム

ではより重要なのです。

特に日本の 伝統的な企業や古い体質の企業は、「感性を磨いて、言外の 言を推し量れ!」なんていうマネージャーがいますが、これからの若い人 や新人にそれを求めても無理があります。

言外の言なんて伝わらないと思っていた方が得策です。明文化しておく ことと、しつこく何度も言うしかないのです。戦後教育を受けてきた平成 やこれからの令和育ちの人達は、外国人と同じだと思っていた方が良いで しょう。

嘗て第二次大戦時代に名を遺した海軍の「山本五十六海軍大将」は以下 の如くの教育論を言い残しています。

部下は、

 ・言って聞かせ
 ・やらせてみて
 ・ほめる

そうしなければ育たないと言っています。これは時代を問わずに重要な、 人を育てる原理原則と言えましょう。

その3 しつこく「プロセス」を共有する

チームとしての仕事の進め方、すなわち業務の手順や役割分担、あるいは ルールや約束ごとを整え、共有することが必要です。

また、基本的な PDCAサイクルを決めることに加え、問題が起きた場合に 活用すべき課題解決の方法なども決めておくことです。

さらには、プロセスを整え、それを皆が順守するにとどまらず、チーム外の 人たちとの創造的な交流も仕掛けて、プロセスが硬直的にならずに刺激を与え るようにすることも、バーチャル・チームでは一層必要になります。

私は業務の手順や役割分担、あるいはルールや約束ごとを整え、共有する 為に、頻繁にナレッジファシリテーション行う事をお勧めしています。

そうすることによって、普段行っている仕事上のPACAを最新なものに バージョンアップし、共有しなおす事です。

この続きは2021年2月15日号になります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です