「認知的不協和とプレゼンテーション」 〜理事見聞録#008〜
みなさん、こんにちは。JPA理事の古澤です。
さて今回は、「心理学とプレゼンテーションの関係性」の中で、認知的不協和についてお話ししようと思います。
みなさん、認知的不協和というのは普段耳にすることは少ないでしょう。それもそのはず、この言葉は心理学の中で用いられる言葉なのです。
認知的不協和とは、「自分の考えと行動が矛盾したときに感じる不安を解消するため、考えを変更することにより行動を「正当化」する現象を説明した理論」で、米国の心理学者レオン・フェスティンガー氏により提唱されました。
これについては、過去、とある実験が行われました。
【実験内容】
非常に退屈な課題を、被験者に長時間やらせる。一部の被験者には、ほかの被験者に対して「おもしろい課題だ」と嘘をつかせ、報酬を与える。最後に、実験をどれくらい楽しんだか、すべての被験者に評価させる。
【被験者の条件】
A:嘘なし・報酬なし
B:嘘あり・1ドルもらう
C:嘘あり・20ドルもらう
【実験結果】
【A】嘘なし・報酬なし→楽しくなかった
【B】嘘あり・1ドルの報酬→楽しかった
【C】嘘あり・20ドルの報酬→楽しくなかった
つまり、嘘をつかない【A】のグループと、「20ドルをもらえるなら嘘も仕方ない」と正当化した【C】のグループは、「楽しくなかった」と正直に回答しました。
これは、楽しくなかった(マイナス)と正直に答える(プラス)・・・A
楽しくなかった(マイナス)と20ドルもらえる(プラス)・・・C
プラスマイナスで釣り合ったための回答といえます。しかし、Bについては
たった1ドルで嘘をつくことで釣り合いが合わなかったのです。そのため、そこで、「実験はそれなりに楽しめた」と考えを変えることにより、「楽しくもないし、ろくに報酬も出ない作業をやった」という不快感を解消したのです。
身近な例を挙げてみましょう。貴方が高額のセミナーに参加したとしましょう。高額であるにも関わらず、その内容はとても値段には釣り合わないお粗末な内容だったとします。
するとどうでしょう。あなた自身で、「高額」=「お粗末な内容」の不釣り合いが生じるため、例えば「プレゼンターの経歴は素晴らしかった」「会場の装飾やサービスは最高だった」など、高額である理由を内心探し求めるのです。
さて、私たちJPAももちろん毎月の定例セミナー等で価格設定をしています。私個人的として客観的に見ても、価格に比べてその内容は素晴らしいもとです。(赤字覚悟なので当然ではありますが)
しかし、認知的不協和の観点で考えると、価格を安くすることにより参加者は例え内容が素晴らしかったとしても「何か安い理由があるのでは」と釣り合いを取ろうと考えてしまうのです。
要するに、あまりにも不釣り合いな組み合わせ(例えば費用とコンテンツ内容)のサービスは、参加者にあらぬ思考を生じさせ、思いもよらない結果を招いてしまうということですね。
もし、アンケート結果などで、想定外のお褒めの言葉やクレームがあった場合には、認知不協和の心理が働いたことも疑ってみましょう。
以上