プレゼン最前線2022年2月15日号
日本プレゼンテーション協会 理事長 高野文夫
2022年2月15日
NPO 日本プレゼンテーション協会理事長
脳科学に基づいた教え方のコツ
1、はじめに
記憶という働きは、3つの流れで行われています。まず情報を受け取りますが、それを「銘記」と呼びます。
その後に忘れずに維持することを「保持」と呼びます。続いて起こるのが「想起」と言うのですが、
この「銘記⇒保持⇒想起」の3つの機能は、脳の海馬と大脳皮質で行われています。
老化による物忘れは、この3段目「想起」の機能低下と言われています。想い出せないというやつです!
2、記憶に深くかかわる「海馬」について
目や耳から入ってきた情報は、一旦脳の奥の「海馬」という部位に保管されます、海馬が情報の一時倉庫と言われる由縁です。
実はほとんどの情報はこの海馬という部位にあるうちにパッと失われてしまいます。
海馬に留まる時間は、数秒から1分位と言われているからです。
ところで、繰り返して思い浮かべたり口に出したりすれば、その情報は長く記憶として刷り込まれる「大脳皮質」という器官に送られるのです。
ですから、江戸時代の声を出しての論語の素読や
昔の軍隊の大声を出しての「復唱」などが効果を発揮したのです。
記憶は保たれる時間によって「短期記憶」と「長期記憶」に分かれます。
海馬の容量は小さいのですが、大脳皮質は大容量です。
そして大脳皮質で記憶された情報は、海馬が数秒と短いのに対して、数分から年単位に及ぶ長期記憶となるのです。
ちなみに、記憶は眠っている間に大脳皮質に送ら
れるようですので、勉強した後はしっかり眠ると良いと言われています。
その転送のプロセスが夢と関係していると言われています。
3、自転車の乗り方や水泳を忘れないのはなぜか?
人の名前や昨日食べた食事のおかずが何だったかは簡単に忘れてしまいますが、自転者の乗り方や水泳なんかは簡単には忘れませんよね?
それはなぜでしょうか? 実は記憶の種類が全く違っているのです。
記憶は「短期記憶」と「長期記憶」に分かれますが。
さらに「長期記憶」は、「陳述記憶」と「手続き記憶」に分かれるのです。
海馬を使う「陳述記憶」は、本を読んだり、電車の車窓から外の景色や家々を眺めるようなもので、すぐ頭からぶっ飛んでしまい易いのです。
ところが「手続き記憶」と言う物は、自転者や水泳やピアノやけん玉やスキーの練習の様に、体で覚えた「動作や技能の記憶」なのです。
大脳基底核と小脳を使う為、記憶障害になっても脳や体に刷り込まれてしまうのです。
だから、しっかり覚え込んでもらう為には、間脳へぶち込め!という表現をして、私は下記の如くの絵をお見せしているのです。
間脳にブチ込む教育をしろ!
その為には、感動レベル(ああいいな、すてき!と言っても、言うだけで自分はやらない)ではなく、
感激レベル(すぐにも行動を起こさないと、いたたまれないと思う)のインパクトを持った教育者の信念や魂の雄たけびが必要なのです。
4、四章のおわりに
人に何かを教えて、その教えが行動につながる、それを昔の人は「知行合一」という言葉で表現しました。
知識と行為は一体であること、本当の知は実践を伴わなければならないという思想です。王陽明が唱
えた陽明学の学説です。
この学説は、人に行動を起こさせるには、ただ知識として納得させただけでは、頭でっかち人の知識が増えただけと言えます。
脳の生理学から言えば、間脳を使って長期記憶にまでもって行かねばならないと言う事です。
その為にはどのように教育したらいいのでしょう?
私は感動レベルを超えた感激レベル(すぐに行動を起こさねば、いてもたってもいられない)にまで誘導する教育が必要だという事です。
それは受講者に真剣な当事者意識と、学びにワクワク感(これを成功させたら自分の価値が爆発する!と思わせる)が無くてはならないと思うのです。
それを植え付け、行動に駆り立てるのが本物の教育者と言えるでしょう。
それではこの続きは、
2022年3月15日号にてお話します。