プレゼン最前線2021年5月15日号
日本プレゼンテーション協会 理事長高野文夫

渋沢栄一の「論語と算盤」とSDGs17の共通マインド

今NHKの大河ドラマでも取り上げられている「渋沢栄一」の人生すなわち彼のビジネスマンとしての生き方やマインドにSDGs17の思想と実に共通しているものを感ずるのです。

 

 SDGs17のバックに流れる思想は、綺麗ごとだけではなくこれらの目的を達成することで、大いに実業の発展に活かして稼ぎなさい!という正しい実業の勧めでもあると思われるのです。

 

 それでは、渋沢栄一の説いた「論語と算盤」の要点をまとめてみましょう。「論語と算盤」は、大正(1916)年に東亜堂書房から出版された本です。著者の渋沢栄一は、日本の資本主義の父と言われています。

 

 論語は自らのあり方を正しく整え、人との接し方の日常倫理を、すなわち孔子が語った道徳観を弟子たちがまとめたものです。

 

 渋沢が実業を行う上での規範にし、世の中で身を処してゆく拠り所としたのがこの論語だった。

そして論語とビジネスを結び付けた点が、彼の本「論語と算盤」の卓越したアイデアだったのです。

 

 ともすれば出世や金儲け一辺倒になりがちな資本主義の世の中を論語に裏打ちされた商業道徳で律し、公や他社を優先することで豊かな社会を作るという思想が、時代を超えたビジネスの原点として、今も経営に携わる人々に読み継がれているのです。

 

 ところで、孔子の説いた儒教では、お金儲けは卑しい所業だとはどこでも言っていないのです。

道徳に則った生き方をしようと思ったら、貧乏では到底それを達成できないのです。お金があって初めて綺麗な美しい生き方ができるのがこの世の現実です。

 

 そもそも学問だって、親などが金銭的にサポートしてくれなければ修められないのです。

 

今の現実を調べてみると、東京大学や早慶などの一流大学で学問をしたり、アメリカのハーバードやイギリスのケンブリッジ大学などに留学するには、相当な高額なお金が必要になるのです。

 

 孔子は利殖を悪いとは一言も言っていないのです。そのやり方が道徳に則っているべきだといっているのです。

 

 渋沢は明治の激動期を生き、近代日本の先駆けになった人だった。基本的に未来志向の人だった。急激な時代の流れで起こる色々な事柄の因果関係に着目し、原因や理由をいつも論理的にとらえようとした。

 

 そしてそこから、未来の仮説を建てる。建てるだけでなく実践し、その結果が500社以上の起業に結実して行ったのです。さらに教育や福祉活動にも生涯にわたって力を注いだのです。

 

 そして私が一番感動するのは、自らが英雄に匹敵する大仕事をやり遂げながらも、何かに飛び抜けて秀でた英雄よりも、偏りのない人を目指しなさいと言っているのです。

 

それは論語の基本概念である「中庸」を良しとする「常識・調和・節度」を身に付けよ!「知・情・意」のバランスを取って生きよ!と言っているのです。 

そして、他者や公益を優先させる姿勢を奨励しているのです。

 

 この続きは2021年6月15日号になります。

 

 

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