この実話は、プレゼンテーションで勝利するためには仲間内での徹底した事前の打ち合わせと、関係者との根回しがいかに重要かを物語る好例です。
(車やヘリコプターの運転士との根回しさえ徹底する必要があるのです。)
事前の根回しは戦略そのものであり、一旦クライアントとの交渉が始まったなら、一糸乱れぬチームプレイが勝利を呼び込むのです。
根回しに失敗すると・・、『私は聞いていません・・とか、それはコンプライアンスに触れるのでは・・』などと腰の抜けた度胸の無い意見がチーム員か ら飛び出るかも知れません。
優秀な真面目なメンバーが揃っている組織程危ないのです。そして、何億ひいては何兆円というビジネスが吹っ飛ぶのです。
さて、ここでご紹介する東京ディズニーランドの売り上げは、すでに数十兆円を超しています。そのような年商何兆円というビッグビジネスもたった
2-3日の会議で決まったのです。それは徹底した社内での意識合わせ、そう!事前根回しの勝利だったのです。
1974年、米国ディズニー社から会長以下の視察団が、日本へ候補地の視察にやってきました。そのとき舞浜を引き当て地とするオリエンタルランドのほかにもう一社、富士の山麓を引き当て地にして、ディズニーランドの誘致に手を挙げた企業がありました。
ディズニー社の視察団は、双方の予定地をじっくり視察した後、最後の夜にオリエンタルランのProjectメンバーに再度会見の申し入れがあり、席上で、提携し舞浜にテーマパークを建設すると伝えて帰って行ったのです。
私は、オリエンタルランドのそのProjectに関係していた建築家T氏と今でも交友があり、呑み友達です。その方から直接聞いた話ですから嘘ではないでしょう。
さて、アメリカのディズニーの幹部たちに、ヘリコプターを使って、いかに浦安が素晴らしい立地条件かをこれ以上ないという位、上手に見せたそうです。いわば天才的なプレゼンをやってのけたのです。
“浦安は首都そのものの一部であり、海や山などの大自然に恵まれている。ましてや日本の大動脈である羽田空港、成田空港、東京駅が眼と鼻の先である”と思わせたというのです。
ヘリコプターという飛び道具を使ったからできた技なのです。
東京駅上空、羽田空港そして成田空港間を数分でひとっ跳(飛び)して見せたそうです。
そのど真ん中に浦安があることを、頭のみならず体感させたのです。
しかも軍で使う戦闘ヘリ『アパッチ』のような大変に性能の良いヘリをチャーターし、たぶんオリエンタルランドとヘリには即席のマークを付けたらしいのです。
まるで自社ヘリです!こんな便利で、海も山もあるディズニーのコンセプトにピッタリマッチした良い場所にお客がドッと押し寄せてこない訳がないと思わせたのです。
ヘリの代わりに、OHP(当時の最新プレゼンツール)やバスや列車を使ってダサい説明をしていたら、間違いなく失敗したでしょう。
実は、誘致に失敗した競合のグループ(富士急ハイランドのグループと思われる)は、正に、バスや列車を使って何時間もかけて、定年退職後のご夫婦のバス旅行の様な退屈な間延び旅行事をやってしまった。
アメリカ人は派手好みで短気な性格があることも事前に知っておくべきだったのです。(事前調査、根回しの失態)
それでは、2021年8月15日号にてお会いしましょう。